パクチーの王様
そのあと、逸人の母、富美《ふみ》から電話があり、結局、店の休みの日に夕食を一緒に、という話になった。
水曜日。
久しぶりに逸人の実家を訪ねると、入り口に仁王立ちになっている日向子が居た。
可愛らしいピンクのワンピースを着ているが、目つきはいつも通りなので、服装が少し浮いている。
親に、向こうの家にご挨拶に行くんだから、こういうのにしときなさいよ、と言われて着たものの、自分でもしっくり来ていない、という風に見えた。
「来たのね」
と言う。
「来ますよ。
私の立場も考えてくださいよ~」
と言うと、渋い顔をしていたが、通してくれた。
門番か……。
門番、日向子と芽以は一緒に広い廊下を歩いた。
逸人は少し後ろをついてきている。