パクチーの王様
だから、いつか、逸人さんと二人きりで遊んだときも、なんだか、ぎくしゃくしちゃって、疲れちゃったのかな、と思いながら、チラと後ろを見てみたが、いつの間にか、逸人は居なくなっていた。
「消えましたよっ?」
と驚き、芽以が声を上げると、日向子も振り返ったが、
「洞窟じゃないのよ。
自分の家よ。
部屋にでも行ったんじゃないの?」
と軽く言ってくる。
「そ、そうでしたね。
でもこの家、昔はなんとも思わなかったんですが。
逸人さんと結婚した……いえ、結婚する今となっては、魔窟のように感じます」
姑と舅、そして、小姑がたまに居る魔窟だ。
「……そうね。
そういう意味では仲良くしましょうね」
と嫁同士、手をつなぐ。
薄暗い廊下をぽうっと照らす、壁のキャンドル型のライトが雰囲気を醸し出し。
ますます洞窟探検じみてきたな、と思いながら、日向子と二人、手をつなぎ、歩いた。