パクチーの王様

 そう言われてみれば、クリスマスイブの夜に誘われたので、なんとなくこういう話があるかな、とは思っていたような気がする。

 いや、弟と結婚しろとかいう無茶な話ではなく――。

「でも、圭太。
 なんで突然、結婚なんて」

「いや、前から話はあったんだ」

 会社の都合でちょっと、と圭太は言う。

 圭太の実家は会社を経営している。

 古参の企業ではあるが、長く続いた不況のせいで、いろいろあるのは知っていた。

「そんな話、お前にはしたくなかったし。
 親にもごまかし、ごまかし来たんだが」

 なんだかわからないまま、圭太の必死さに、黙って手を握られ、話を聞いていた芽以だったが、

「相手が妊娠してしまって――」

 まで聞いたところで、とりあえず、殴ってみた。





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