パクチーの王様
「でも、婚約してから、楽しくなかった。

 ただの友だちだったときより、苦しくなった……。

 貴方の心は私にないのに。

 最初からそんなことわかっていて、結婚したいと言ったのは、私だったのに。

 婚約してみても、ただそれがよくわかっただけだった」

 圭太、と日向子は圭太を振り向く。

「それをわからせるために、私と婚約してくれたの?」

 いや、そんな小器用なことの出来る男ではないですが。

 よくご存知でしょうに、と思いながら、芽以は二人を見つめていた。

 圭太は、日向子がなにを言い出したかと、ただ戸惑っているようだった。

 日向子は立ち上がり、みんなに向かい、頭を下げる。

「すみません。
 破談にしてください」

 富美たちが、えっ? という顔をした。
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