パクチーの王様
「今どき、世襲しようと思うのが、そもそもの間違いだったんですよ。

 会社も子どもと一緒です。

 産み出したのは自分たちでも、大きくなり、意思を持ってしまったら、もう、こちらの思う通りにはならない。

 あそこまで大きくなった企業は、最早、誰のものでもない。
 それが嫌なら、一から会社、作り直したらどうですか?」

 そう逸人が言ったとき、ふいに圭太が、

「……逸人にやらせなよ」
と言い出した。

「俺はもともと器じゃなかったんだ」

 圭太はナプキンをテーブルに投げ、椅子に背を預ける。

「逸人なら、甘城のバックアップがなくともやっていける。
 重役たちもそう思ってるさ」

 だが、逸人は、
「そんなことを本気で思っているのなら、そいつらの目は節穴だ」
と言い出した。
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