パクチーの王様
「ほら、舞い踊りなさいよ、鯛やヒラメ。
私のおかげで、逸人があんなはっきり告白したんだから」
……すっかり元に戻ってしまったようですね、日向子さん。
翌日、珍しく営業時間内にやって来た日向子はそんなこと言い出した。
ちょっとした照れ隠しなのかもしれない。
いや、そう思いたい……、と芽以は、昨日のしおらしい様子は何処へやら、いつものように高圧的にしゃべり出す日向子に思っていた。
「ところで、あれから、さすがになにか進展した?」
と日向子は逸人の方をチラと見ながら、訊いてくる。
「いえー、相変わらずなんですけど。
今朝なんか、俺が芽以のそばにいると芽以が静たちと浮気をするから、別れてくれ、とかよくわからないことを言ってました」
「……本当に、相変わらずね」
ええ、本当に……。