パクチーの王様

 静は微妙にパクチーを避けながら食べていたが、日向子は普通に口に運び、顔をしかめていた。

 だが、すぐに、おや? という顔をして、もう一口食べて、驚いたような顔をする。

「芽以っ」
と戻りかけていた芽以を呼んできた。

 はいはい、なんでございましょう、乙姫様、と芽以が行くと、
「食べられるわっ、パクチーがっ。
 嫌なんだけど、もう一口食べてみたいと思ったっていうかっ」
と叫び出す。

「ええっ?」

「っていうか、パクチー専門店来といて、その一言、どうかなと思うけど」
と見事に避けて食べている静が苦笑いして言っていた。

 しかし、周りのお客さんたちは、ウェルカム! という顔で見ている。

 ようこそ、こちらの世界へ! と言った感じだ。

 ……すみません。
 私はまだ、行けそうにありません、と思いながら、

「よかったですね」
と言うと、日向子は、おや? と気づいたような顔で言ってきた。

「そういえば、なんで、あんた、私に敬語なの?」

「え、今?」
と静が、芽以の気持ちを代弁してくれた。






< 510 / 555 >

この作品をシェア

pagetop