パクチーの王様
「破談にはしなかったが、延期になったそうだぞ、式」
昼休憩に入り、二人で、食器を片付けていたとき、逸人がそんなことを言ってきた。
「えっ。
そうなんですか……」
食洗機に入れるのに、微妙に多過ぎた皿を洗いながら、逸人が言う。
「まあ、いつもあんまり物事を考えない圭太が今回はいろいろと考え込んでいるようだし。
いいんじゃないか?
一度、じっくり落ち着いて考えてみるのも」
どうなるんだろうな、と不安には思うが。
富美が言うように、早くに結論を出そうとする必要はないのかもしれないな、とも思っていた。
「俺たちも少し考え直してみようか」
そんな逸人の言葉に、棚に片付けかけていた食器が手から滑り落ちかける。