パクチーの王様
「お前が本当に俺を好きになってくれたときに、これも渡そうと思ってた」
と逸人はそのラッピングされた白い箱を見せてくる。

「指輪だ」

 ええっ?
 逸人さんが指輪を用意するとかっ。

 なんだかそんなことしそうにない感じがしていたので、本当に驚いた。

「これもとりあえず、なしにしよう。

 お前が気に入るかどうかわからないものだからな。

 俺が勝手に、お前にはこういうのが似合うかなと思って買ったものだから」

 めっ、めちゃくちゃ見たいんですけどっ、それっ。

 どういうのが私に似合うと思っているのか、知りたいんですけどっ、と思いながら、芽以の目はその小箱に釘付けになっていたが、逸人の目は、生ゴミ入れに釘付けになっている。

 ま、まさか、そこに捨てる気とかっ?
と思ったとき、裏口のドアが開いた。

 グレーのロングコートを着た圭太が立っている。
< 514 / 555 >

この作品をシェア

pagetop