パクチーの王様

 だが、その前に立っている逸人が、小首を傾げ、言い出した。

「おかしいな。
 走馬灯のようにいろいろと蘇らない。

 そして、無理やり過去を思い出してみても」

 芽以、とこちらを振り返り、

 「お前との思い出が全然ないっ。
  お前、圭太とばっかり居るじゃないかっ」
とよくわからない文句を言ってくる。

 いや、何処で怒ってるんだ、この人は……と思っているうちに、業を煮やしたらしい逸人が包丁を持つ圭太の手をつかんだ。

 圭太の方がびくりとする。
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