パクチーの王様
「さっさとしろっ、圭太っ!
だから、お前は決断力がないと言われるんだっ」
と言いざま、逸人はその刃をおのれの腹に当てさせる。
わああああああっ、と圭太は悲鳴を上げて、包丁を投げ出した。
「死ぬじゃないかっ」
いや……殺そうとしてたんですよね?
尻餅をついて叫ぶ圭太にそう思う。
っていうか、刃を当てても引かなきゃ切れないから。
切っ先ならともかく。
普段料理しないから、知らないんだな、と芽以が思ったとき、
「こんにちはー」
とバリトンの素晴らしくいい声がした。
裏口のドアが開いて、神田川が現れる。
「追加分持ってきましたよー」
とあのゆるキャラみたいな顔で笑った神田川は、
「あ、これ借りていいですか?」
と床に投げ出されていた包丁を取ると、開いたままのドアの向こう、青いカゴの中のパクチーをひとつ取り、茎に少し切り込みを入れてみせると、
「ほら、今日のはまた一段と香りが鮮烈なんですよー」
と芽以にとっては、あまり喜ばしくないことを高らかに言ってきた。
だから、お前は決断力がないと言われるんだっ」
と言いざま、逸人はその刃をおのれの腹に当てさせる。
わああああああっ、と圭太は悲鳴を上げて、包丁を投げ出した。
「死ぬじゃないかっ」
いや……殺そうとしてたんですよね?
尻餅をついて叫ぶ圭太にそう思う。
っていうか、刃を当てても引かなきゃ切れないから。
切っ先ならともかく。
普段料理しないから、知らないんだな、と芽以が思ったとき、
「こんにちはー」
とバリトンの素晴らしくいい声がした。
裏口のドアが開いて、神田川が現れる。
「追加分持ってきましたよー」
とあのゆるキャラみたいな顔で笑った神田川は、
「あ、これ借りていいですか?」
と床に投げ出されていた包丁を取ると、開いたままのドアの向こう、青いカゴの中のパクチーをひとつ取り、茎に少し切り込みを入れてみせると、
「ほら、今日のはまた一段と香りが鮮烈なんですよー」
と芽以にとっては、あまり喜ばしくないことを高らかに言ってきた。