パクチーの王様
月末、芽以は会社に行った。
いよいよ、最後の朝だ。
見慣れた受付からの景色。
朝日に輝くガラス張りの玄関。
初めて此処に緊張しながら立ったときのことを思い出す。
すべてが懐かしく、涙が出そうだった。
同期のみんなや職場のみんなが途中で来てくれて、それぞれ大きな花束をくれた。
課長が笑って言ってきた。
「今度、パクチー食べに行くよ」
「ありがとうございます」
同期が笑って言ってきた。
「パクチーは食べないけど、行くね」
「……ありがとう」
その気持ち、ちょっとわかる、と思いながら、芽以は笑った。