パクチーの王様
「お店やっててよかったです」
送別会は週末なので、今日はそのまま帰り、夜の営業を手伝った。
逸人にそう言うと、なんでだ? と料理を出しながら、訊いてくる。
「だって、みんな、お店覗いてくれるって言ってるし。
会社辞めても、またみんなに会える気がするから」
と言うと、
「……そうか。
じゃあ、みんなが何度も来てくれる店にしないとな」
と目を伏せ、微笑む。
はいっ、と言いながら、芽以が、
ま、パクチー入れない方が誰でも何度でも来てくれそうだけど、と思っていると、逸人は逸人で、
「だが、男は来なくていいがな……」
となにを疑ってか言ってくる。
いや、別に社内に私をいいなんて思ってる人、居ないと思いますけどね、と思いながら、芽以は料理を運んだ。