パクチーの王様




「お待たせしました」

 追加の料理を持って行った席は、男の人二人で呑んでいた席で、酒がかなり進んでいるようで、ちょっとやかましかった。

 楽しく呑んでくださるのはいいんだけど、周りのお客様がちょっとご迷惑そうだな、困ったな、と芽以は思っていた。

 此処、個室とかもあるといいんだけど、と思いながら、行こうとしたとき、
「あっ、ちょっと待って」
と片方の男が言い、芽以の手をつかんだ。

「ごめん。
 ワイン、さっきと同じ銘柄の追加ね」

 ま、まだ呑む気ですか、と思いながらも、
「あ、はい」
と行こうとしたが、男は手を離さない。

 困る芽以を面白がるように見て、笑っている。

「あのっ、は、離してください」
と小さな声で芽以は言った。

 お客様だしな~。
 あまり騒ぎ立てると他のお客様の迷惑になるしな~。

 なんとか静かに振りほどこうとしたのだが、男もその連れもニヤニヤしているだけだ。
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