パクチーの王様
「我々は圭太さんに難癖つけたいわけではありません。

 そして、我々の目は節穴ではありません。

 ……でも、我々が認めた貴方が、圭太さんでいいとおっしゃるのなら、それに従っても、大丈夫だということなのでしょうね」
と少し寂しそうに安藤は言った。

 圭太が社長になるのが嫌だというのではなく、単に、逸人の下で働いてみたいと思っただけのようだった。

 逸人は、安藤に向かい、頭を下げた。

「無礼なことを申し上げまして、申し訳ありませんでした。

 でも、圭太は……

 兄は必ずや、貴方がたの期待に応えられる社長となると思います。

 会社は圭太に。
 私の城は此処で充分です」
と言って、逸人は狭い店内を見回す。

「どうか、私を此処の主《あるじ》で居させてください」

 パクチーの王様は、そう臣下に願った。

 安藤は目を閉じ、わかりました、と微笑む。
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