パクチーの王様
芽以は門の前で、家の灯りを見たとき、はた、と気づいた。
なにも言わずに来てしまったと。
「なにしてる?」
と逸人が訊いてくる。
いきなり、芽以が鞄をゴソゴソやりだしたからだろう。
「いえ、貴方を連れてくると親に行ってなかったので」
「まあ、すぐに帰るが、そうだな。
一応、連絡しろ」
と言っているうちに、ガチャリと玄関が開いた。
「雪降ってるってばーっ」
と言いながら、五歳になる兄の息子の翔平《しょうへい》が飛び出してきた。
兄が、
「寒いぞ、これを着ろ」
と上着を手にそれを追ってきて、こちらを見、おっ、と言う。