パクチーの王様
「ご飯は軽く食べてきました。
 ありがとうございます」
と言いながら、チラと逸人の方を窺う。

 ふと気づけば、母は逸人をもてなしながら、なにやら落ち着かなげに、何度も逸人を見つつ、口許が笑っている。

 ……なにかの言葉を期待してやしませんか? お母さん。

 父は逸人と話してはいるのだが、同じソファに座っているのに、距離をとっていて、少し機嫌が悪いようにも見える。

 普段は、ちょっとやかましすぎる圭太より逸人の方が話が合うようだったのに。

 まあ、クリスマスの夜に連れてくるったら、大抵、そういう仲だと思うよな~。

 みんなでやってきたことはあるが、逸人ひとりなのは初めてだから。

 というか、みんなの顔に書いてあるのだが――。

『お前、昨日、会ってたの、圭太じゃなかったか?』
と。

 ……いや、私も何故、こうなったのか、よくわからないんですけどね、と思っていると、母親の、早く早くーっという視線に耐えかねたように、逸人が口を開いた。
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