パクチーの王様


 そのあと、逸人たちがリビングに戻ってきた。

 父親が逸人の肩を叩き、
「まあ、芽以の部屋にでも行って、二人で話してきたらどうかね。
 ずっと私らと話しててもね」
と笑顔で言う。

 水澄は、
「あら、もう帰るんじゃないの?」
と言い、ふふふ、と笑っていたが。

 だが、逸人は、
「じゃあ、少しだけ。
 芽以」
とこちらを振り返る。

 なんだかわからないが、みんなに見送られ、芽以たちは、二階の部屋に上がった。

 兄たちの家は近所なのだが、翔平が産まれたときは、まだ、アパート暮らしだった。

 それで、水澄の実家が遠いこともあり、三歳くらいまでは、ほぼ、此処に居た。

 翔平の夜泣きがひどかったからだ。
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