パクチーの王様
芽以はふと、訊いてみる。
「お父さんたちとなにを話してたんですか?
途端に和やかになったようですが」
「いや、会社を辞めて、パクチー専門店を開くことになったという話と。
今までの貯金があるから、すぐに店が軌道に乗らなくても、芽以を養うくらいは大丈夫だという話をした」
娘の生活の安定が保証されたから、にこやかになったのだろうか、と思ったのだが。
「お義父さんも、パクチーがお嫌いだそうだ。
あれは人間の食いものじゃないと言っておられた。
その点、話が非常に合った」
……人間、何処で意気投合するものかわからないものですね、と思いながら、
「そういえば、兄はパクチー好きだった気がするんですが」
と芽以は訊いてみた。