パクチーの王様



 それからは、怒涛の一週間だった。

 来週末にはもうオープンすると逸人が言うので、芽以は会社に出つつ、有休消化もしつつ、開店準備を手伝った。

 ある程度、準備は済ませてあったようだが、次から次へと新たな用事が押し寄せてくる。

「最初は俺も自信がないし。

 上手く店を回せるかわからないから、問い合わせがあった人と、知り合いと、たまたま立ち寄った人間だけで、客はいい」
と逸人は言う。

 広告は特に打たないようだった。

 自信がないとか言うんだ、この人、と意外に思ったが。

 おのれに対しても、自信過剰にならずに、冷静に分析できるところが、逸人だな、と思わないでもなかった。

「……一番悩んだのは、お前の制服だ」

 ある晩、逸人は、そんなことを言い出した。
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