mirage of story
甘く、哀しい死の誘惑。
そう思うシエラの思考は、もうまともではなかった。
――――。
ゆっくりと流れる時間の中で目を開ける。
そこには彼が剣を振り下ろすその瞬間。
その剣の残酷な煌めきが救いに思えてしまった。
(――――母さん、今行くわ)
彼女は、再び目を閉じた。
「........シエラァァッ!」
ッ。
薄れる意識。
堕ちていく中で懐かしい声が聞こえた気がした。
空耳のように聞こえたその声と、炎が燃える弾ける音が重なる。
誰なのだろうか。
シエラはそう思ったが、遠退く意識に負けてそのまま意識を失った。
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