mirage of story














――――ッ!

地の底から轟く、禍々しい竜の雄叫びが聞こえた。



大地の裂け目。
その下へと続く暗黒の闇。

その闇の裂け目から、今まで地の底に封じ込められていた闇が迫り上がる。
此の世の物ではないような緊張感と恐怖感を、その闇はこの世界に生きる全ての者に抱かせた。

















"古より忌々しいあの二匹の竜共にこの身を地の底に封じられてきた。


.........時というものは実に恐ろしいものよ。

我等が神から預かりし美しき世界が、幾千幾万の時で人どもがのさばる廃れた世界に成り果てた"




ゴオォォッ。
嘆く闇の声に共鳴するように、再び大地が唸り声を上げる。

その大地の唸りに、裂け目の底から迫り上がる闇は一層に速度を上げる。













"この世界を奴らにくれてやるなど、勿体無い。


我は世界を在るべき姿に戻さねばならぬ。
傲慢で愚かな人どもから、この世界を取り戻さねばならぬ。

それが我の使命。
.......それが我の悲願"





言葉が紡がれるごとに、世界の闇が濃くなっていくのが分かった。

いつの間にか空は全て暗雲に覆われて、大地から滲み出る闇で木々は萎れ枯れていた。
バラバラと、世界が壊れていく音が聞こえた。









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