mirage of story
ジェイドがいつもと何だ変わりもしないで、ヘラッと笑う。
こんな時くらい真面目になりそうなものだが、最後の時まで彼は変わらないままなのだろう。
それがジェイドという男の性分というものだ。
「我等は、人間と魔族そして世界の運命を掛けた最後の砦。
全てを決める指揮官は、ルシアス姫様―――いやシエラ様、貴方です」
そしてジェイドの軽い声に重ねるように、ジスの静かな声。
ザッ。
―――ッ。
「皆さん――――」
ジェイドの言葉。
ジスの言葉。
.......そしてその言葉に、次々とシエラに平伏す兵達の姿。
「俺もシエラの決断に従おう」
追い討ちを掛けるように、ライルの言葉。
待つのはシエラの返事のみ。
迫られるは皆の、世界の運命を託された決断。
だが迷っている時間も、迷っている理由もシエラには無かった。
―――キイィィンッ!
シエラは言葉ではなく、腰から抜いた剣を天に突き立てて答えた。
暗く闇に染められた空に、一筋鋭い光が煌めく。
その光は、何処か皆には希望の光のように見えた。
.