mirage of story












"――――では、我等も向かうとするか"





ブワッ。
見送る三人と兵達に、天から注ぐ声と風。

見上げれば、光を放つ竜。
一つになった水竜と炎竜。



それからブワッともう一度風が起き、気が付いたら皆竜の背に居た。










「行けるの、水竜?」



シエラは剣を腰に納め、竜を見る。


残る兵はザッと見ても結構な人数が居る。
それに自分とライルとジス。

シエラは少しだけ不安になり聞いた。









"竜を見縊るでない。
このくらい、空気と同然ぞ"



自慢気な声。
心配する必要は無いようだ。



背に大勢の人を乗せた竜は、大きく翼を広げる。

背に乗る人はただ呆然としている者もあれば、興味深げに竜の身体を埋め尽くす鱗を触る者もあった。
彼等にとって竜の背に乗る機会など、たとえこのまま世界が終わろうと終わらまいと最初で最後の機会となるだろう。


















"拾いに行くのは面倒だ。

振り落とされぬよう、しっかりと掴まっておれ!"




ザッ。
.......ブワアァァッ!

巻き起こる風、背に乗る人は皆思わず目を瞑る。



ッ。
そして風が治まり皆が閉じた瞳を一斉に開けば、そこはもう遥か空のその上。

いつも見上げていたはずの雲を、皆は初めて下に見ていた。
だがその雲の上も、今は闇色で暗かった。










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