mirage of story









「.........無駄口を叩く暇があったら走れ」



「無駄口って、ただちょっとした感想述べただけなのに。
ロキちゃん厳しいー」




冷たくあしらうロキに、ジェイドはヘラッと軽い表情に戻り言う。


集団の先頭はロキ。
それに続いてジェイドとその他の兵士達。

ジェイドはグッと手綱を引き、前を行くロキに追い付いて併走する。













「ロキちゃんはこれ見て何も思わないわけ?

ほら、見てみろって。
後ろから来てる奴等も、全員顔引き吊ってる。

鉄仮面無愛想なロキちゃんだって一応は人なんだから、怖いとか何かしろ思うでしょうよ?」




速度を上げて隣までやってきたジェイドがロキの顔を覗き込み言う。











「..............そのような感情など、もうとうの昔に無くなった。

恐怖は人を弱くする。
強くなるためには―――生き抜くためには必要の無い感情だ」




「必要の無い感情ねぇ........別に俺は必要無いとまでは思わないが、まぁ人を弱くするってのは同感かな。

だがなぁ、恐怖って人特有の感情が無いと此処まで人らしく無くなっちまうのかね。
ロキちゃんみたいに」






先頭を同じ速度で併走する二人の間で、珍しくも会話が成り立つ。


ジェイドはそう言い前を向き直した。

適度な距離を保つ両者。
お互い前を向いたまま視線を合わせないままで会話が続く。















「お前も人のことを言えたものではないだろう?

..........お前も私と同じ。
正常なら恐怖を抱くこの状況、だがお前も私も恐怖を感じてはいない」







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