mirage of story
「..........」
ジェイドの見つめる先に、視線を合わすロキ。
目にはただ辺りと何だ変わりない悲惨な世界が広がっているように見えた。
ダッダッダッダッ。
「ハァ....ハァ....どうかされたのですか?」
止まる二人に追い付いた軍勢は、息を切らせながら突然止まった進軍に首を傾げる。
舞う土埃。
兵達のそして彼等を乗せる馬達の荒い息遣いを、止まる二人は感じたが二人は依然として視線をある一点から離さない。
「........私は彼等を連れて先に向かう。
すぐに追い付いて来い。
本来の目的を忘れるような真似だけは無いよう言っておく」
..........。
暫くの沈黙の後、ロキはそう言い進行方向にその身を向き直す。
目には見えない何かが視線の先に。
ロキには、その何かを戦で培ってきた鋭い感覚で感じ取ったらしい。
悟ったようなロキの声に、ジェイドは声は真面目にヘラッと笑って見せた。
「あぁ、分かってる。
.......すまないな。
恩に着るぜ、ロキちゃん」
他の兵達がその何かが見えず首を一層に傾げる中、ロキとジェイド二人だけの間で言葉が交わされる。
他の者には分からなくとも二人の間には通じたらしい。
二人は一瞬だけ互いを振り返り、本当に一瞬だけ視線を合わせた。
「行くぞ」
ヒヒーンッ。
前を向き直りロキは馬の手綱を引く。
自分達二人を残し理解をしていない他の兵達に、牽制するような鋭い紫色の瞳で彼等を促した。
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