mirage of story
運命は変えられてしまっても、二人の間にある繋がりは引き離すことが出来なかったらしい。
運命をこんな結末へと捻じ曲げたその元凶でさえも、二人の間にあるものの強さを見破れなかった。
きっと二人の間に築かれたその強さには、捻じ曲げられたこの運命を正しい道へと修正していく力を持っているのだろう。
だからこそ敵同士としての再会も、大切な者同士としての再会も出来た。
またこうして、二人共にいるという運命の上に彼等は立つことが出来た。
狂わされた運命に翻弄され沢山の物を失い手放して来た彼等だが、手に入れた物もある。
それはより一層強くなり返ってきた彼等の間の絆だったり、仲間だったり様々な想いだったり。
今この世界の危機が目の前に深く腰を据える中で、振り返り悟り少しだけ心が穏やかになった。
「私ね、ルシアスとして城に居た頃は守られるばかりだったけど.......貴方と離れ離れになって、母さんにエルザに助けられて"魔族"じゃなく"人間"として生きるようになって、沢山の人と出会って沢山のことを知ったの。
失ったものも多いし、もうそれは幾ら願っても戻って来ない。
だけどね、今の私は前の私よりも強くなった。
守られるだけじゃない、今ならこの手で誰かを守れるようになったの」
キイィン。
シエラとライル、二人の瞳がぶつかる中でシエラは再び剣を握り直した。
金属音。
固く冷たい剣の柄をしっかりと握り締めて、その小さな手に馴染ませる。
剣を握る感覚、その感覚にはもうすっかり慣れた。
初めて剣を握ったあの時―――カイムに出逢い剣を教えてもらったあの時には、絶対慣れることはないと思っていたのに。
「私が剣を振るうのは、人を傷付けるためじゃなくて誰かを守るため。
それはこの剣を私にくれた母さんにも、私に剣を教えてくれたカイムにも誓った。
だから私はこの剣で、私自身の力で守らなきゃ。
母さんの想いも.........そしてカイムのことも」
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