mirage of story











".............この名は未来永劫、君達がこの世界に存在する限りこの世界に刻まれるであろう。

君達の歴史と共に。君達の軌跡と共に"





そんな彼等を、歓声を上る民達を竜達は平等に優しく見守るような温かい瞳で見つめる。


........この世界の上で唯一、見てきた現実の全てをその記憶に留めた瞳で。
全てのものから欠落したはずの、かけがえのないものの存在を確かに留めた唯一のその瞳で。



















"君の存在はいつまでもこの世界と、そして彼等と共にある。

――――カイムよ"






二匹の竜が最後に落とした言葉は、歓声と祝いの色に暮れる人々の声に掻き消されて誰の耳にも届くことは無かった。







今日は旅立ちの日。祝いの日。
人はきっとこの国の輝かしい未来を夢見て、笑い歌い踊るだろう。



そう、何も知らないままで。
かけがえのないものを―――彼を忘れたそのままで。

そのことにさえ気が付かないままに、ただ素直に真っ直ぐに祝いに華を咲かせるだろう。




そのことを思って竜達は、人には気付かれぬようなほんの微かな哀しみを込めて笑っていた。








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