mirage of story
epilogue-紅の傷痕-
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緑の香りがした。
ザワザワと木々達が騒めき歌うのが聞こえた。

濃淡ある自然の緑。
それが空高くに輝く太陽の光に透かされて、癒やしの光となり其処へ降り注いだ。









「.........この道、本当に合っているのか?」



そんな癒やしの光降り注ぐその場所で、道とは言えない道を進む二つの人の影。

覆い茂る木々や草。
.......自然に溢れることは大変結構なことであるが、今の状況では少々邪魔である。









「合っているわ!
.......きっと多分、恐らくは」


「何なんだ、そのかなりの不安残る曖昧さは」




緑の中を、この緑覆い茂るとある小さな森の中を突き進むのは男女二人。



歳は二十半ばを過ぎてその後半に差し掛かった辺りだろうか?

一人は印象的な蒼色を持つ男。
そしてもう一人は澄んだ水色の瞳でオレンジがかった長い髪が印象的な女。

二人共に恰好は軽装で、旅人が着るような薄汚れた外套を羽織っていた。
だけれど外套の端がやたらと周りを取り巻く木々の枝へと引っ掛かって、正直実に邪魔そうに見える。











「し、仕方ないでしょ?

自慢じゃないけど私、此処で迷わなかったことは一度も無いんだから!」



男の指摘に男より少し先を行っていた女は立ち止まり、少しムキになって答える。

言っている声は何故か自信満々であるが、言葉通り全然自慢になりゃしない。
そんな彼女に男は呆れたように言葉を返す。







「.........それ、本当に自慢にならないぞ」



そう。
二人は完全に迷っていた。

だが今更気が付いたところで、もう遅い。
男は呆れた顔で笑い少し前で歩みを止めた彼女に追い付く。







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