mirage of story








二人は、彼等は一体何者か?


様相からすれば、どこぞの単なる旅人と相違ない。
腰に剣などは携えているものの、今となってはもう本当にいざという時の護身用でしか無いのが事実である。



ほんの数年前までは、この世界は戦いと憎しみに溢れていたというのに。

未だ世界に深く刻まれた戦いの傷跡は残ってるものの、世界は随分と復興した。
細々とした諍いまでもが無くなったとは言えないが、今のこの世界を取り巻くのは戦いではなく平和である。



数年前とは見違える程に穏やかな世界。

あの荒み傷付いた世界がたったの数年で此処まで復興を見せたのは、偏にある一つの国の誕生とその国を治める二人の偉大なる王の尽力の成果であると言っても過言であるとは誰も言わないだろう。




若き王。
あの記憶にもまだ新しく鮮明き刻まれる忌まわしき闇、哀しき闇との戦いで英雄と救世主と呼ばれたその二人。

若くはあっても、そんな二人の人望は何よりも厚く民達は二人を敬いそして従った。
国が誕生して早数年、民の誰もが二人の王に変わらぬ信頼と忠誠を持ち日々を生きている。




この世界に平和を。

戦いの時代を教訓に、彼等は世界を復興させ再生させるためにその力を尽くした。
それから世界だけでなく戦いで荒んでいた人々の心も―――彼等はその人格と誠意で癒してきた。



そのおかげなのだ。
今もこの世界の何処かで誰かが笑っていられるのは。












「これじゃあ埒が明かない。
一度此処から出よう」


「出るにしても方向が分からないわ!」



「.......」







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