mirage of story
「――――あの日、か」
問い掛ける言葉に答えるシエラ。
その答える言葉に、ライルの中にも彼女の中に蘇る日と同じ日の記憶が頭の中を巡る。
同じ日。
だが、全く異なる真逆の立場に居た二人の記憶。
故に蘇るその日の記憶は当然同じものではなく、ライルはその日の記憶に彼女とは違うものを思い出しその声に陰を落とす。
「あ........ごめん。
私は別に、貴方を責めたい訳じゃないの」
何の裏も無く、ただ零してしまった自らの言葉。
それに返ってくるライルの陰を帯びた声。
シエラはハッとした。
零してしまった自分の言葉の重さ、そしてそれと嫌でも連動してしまう記憶に。
すぐさま気が付き急いで訂正をするが、零れた言葉と蘇ってしまった記憶はもうどうにかなるわけでもない。
気まずさに少しだけ二人は黙り込む。
「いや、構わない。
実際俺はあの時、お前に恨まれ憎まれるような残酷なことをした。
人として生きていくことを恥じねばならないようなことをした。
.........あの日あの頃俺がしたことには弁解の余地も無いし、汚い言い訳をして罪を理不尽に薄めようとも思わない。
あれは紛れもない、俺の犯した罪だ」
声にはまだ陰があった。
でも、それでもライルの言葉はシエラから逃げも隠れもせずに真っ直ぐに彼女へと向けられる。
彼の芯の強さ。誠実さ。
現実からも過去からも目を背けない彼の強さが今まさに表れていて、そんな彼に自分も真っ直ぐ向き合わねばとシエラはライルをしっかり見据える。
思い出す日。
彼の記憶の中には人の叫びと揺れる炎。
血に塗れた剣と自分の中から溢れる程に湧き上がった憎悪の感情。
そう、彼が―――ライルがあの日シエラの大切な人を大切は場所を奪った。
彼が、あの村に火を放ち逃げ惑う何の罪もない人間達をただ彼等が人間であると理由で命を奪った。
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