mirage of story
戦いの世の最中だった。
その上にあの時はまだ何も知り得なかった。
それは紛れも無い事実。
だが、何も知らなかったというそんな理由では済まない程に重い罪であることはライル自身が一番よく判っている。
「憎まない方が可笑しい。
憎まないでくれとは言わない......寧ろ憎むのを止めないで欲しい。
過去の戒め。
それが在るからこそ、俺はしっかりとそれに向き合わなきゃならないと前を向いていられる。
もしもシエラ、お前の中で俺への憎しみが何も無くなって俺の前で笑う時が来たら―――俺はこうしてお前の隣に居られなくなる。
お前の隣に居る自分を恥じて、お前と真っ直ぐに向き合えなくなる」
しっとりと哀しい青色の、蒼色の瞳。
周りを取り巻く花々と満ちる異空間を思わせるようなこの空間に、そのライルの色が溶け込む。
空間の中にその一色が映える。
「本当なら今お前の隣に居ることさえ恥じるべきだが......それは許して欲しい。
―――"お前のことを頼む"。
俺は誰かに言われた。......戦いが終わったあの時、確かに誰かに言われた。
あの時のこと―――目に見えるもの耳に聞こえるもの、全部まだ鮮明に残っているのに俺にお前のことを頼むと言ったはずの誰かのことだけは思い出せないんだが。
俺の幻聴だったのかと疑ったが、違う。
俺は確かに言われた。
........だから俺は恥を晒すことになろうとお前の傍に居ると決めた。
誰かが言ったその言葉が、お前の傍に居たいという俺の中の本当の想いと重なって今お前の隣に居る」
.........。
「...........すまない、変なことを言っているな。俺は。
話が逸れた。
―――あの日、お前が共に居たというのは一体誰なんだ?」
いつもとは違う雰囲気に後押しされたように、ライルは一気に言葉を吐き出した。
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