mirage of story










言葉の意味は判らなかった。
何も判らぬままで、勿論納得などは出来なかった。


知りたい。思い出したい。
その者のことを、彼のことを。




なのに、判らねばならない気がした。
これ以上の言及は、もうもはや罪であるようにさえ思えた。

その者のことを、彼のことをそのまま忘れ去らねばならない。
二人にはそう思えてしまった。

















"..........きっと恐らくこの世界の中で、彼の存在を断片でも感じることの出来る者は限りなく少ないだろう。

彼の存在のその断片。
それが残ってしまったが故に、君達を悩ませている"




"......ならば、消してしまえばいい。
さすれば病むことも無くなろう。

完全に。
元からその者など、存在しなかったように。
君達がそれを望めば、我等はそれをすぐに叶えようぞ"





低く荘厳な凛とした響きの声のまま、一拍の間を置きそう続けた。



消してしまえばいい。
完全に忘れ去ってしまえば、この記憶に蔓延る違和感をもう感じることも無くなる。楽になる。

さぁ、どうする?
続ける竜達のその声色は変わらなかったが、その陰に竜達が二人を試しているようなそんな色が垣間見えた。




試されている。
だが、一体何を?

試されていることには気付いたが、シエラもライルも竜達が果たして自分達の何を試しているのかは判らない。












「..........」


「..........」




すぐに答えることは出来ない。
何も無いただの空間を見つめて、二人は暫く押し黙る。

沈黙の中。
周りを取り巻く緑がサラサラと風に揺れる音が響き、優しい花は変わらず香る。







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