mirage of story
此処で待っててとは言われたものの、一人その場に残されたカイムはどうも落ち着かなくて立ち尽くす。
右へ行ってはキョロキョロ。左へ行ってはキョロキョロ。
とりあえず何もすることがないカイムは、近くにあった椅子に腰掛けることにした。
.......でも、何だかやっぱり落ち着かなくてまた立ち上がる。
端から見れば、立ったり座ったりと凄く挙動不審である。
(うーん....どうしよう)
カイムはとりあえず落ち着こうと辺りを見回してみる。
すると目に入ったのは、木で出来た小さな家具。
それに暖かそうな暖炉。
暖かな色のカーテンに、空を見渡せる丸い天窓。
そして吸い込まれるように移した視線の先に、棚の上に立て掛けられた一つの写真立て。
ッ。
カイムはその写真立てが何だか気になり、いつのまにか棚の前までやってきていた。
(───これは、シエラ?)
カイムが覗き込んだその写真立ての中の写真。
その中には一人の女性の隣で、無邪気な笑みを浮かべるシエラの姿が映されていた。
古い写真なのだろうか?
その写真はほんの少し色褪せていて、中のシエラは何だか少し幼く見える。
そして何より写真の中のシエラの顔は今よりも、カイムが知っているシエラよりもずっとずっと幸せそうだった。
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