mirage of story
自分と出逢う前のシエラ。
自分の知らないシエラ。
まだ哀しみを知らない、純粋に平和しか知らなかった.......まだ、大切な人を失う前の写真なのだろう。
(..........シエラ、凄く幸せそうだな。
俺、こんなシエラの顔は見たことないや。
何だか、悔しいな)
笑っている姿は、カイムも何度も見たことがある。
決してその回数は多いわけではないけれど、彼女の笑みは綺麗で美しいということは知っていた。
だけどカイムの中にある限りのシエラの笑顔は、写真の笑顔には到底適わなくて何だか悔しかった。
カイムの記憶の中にあるシエラの笑顔は顔は笑っている。
心だって笑ってる。
だけど、常に哀しみや苦しみのせいでどこか陰っていた。
(シエラの中には、心の底から笑えなくなる程の深い.....哀しみがあるのか)
そう思った。
その瞬間に何だか悲しくなった。
仲間が心から笑えないなんて。
一緒に傍に居て、それほど辛いことはない。
見ていられない。
上辺だけの笑顔なんて、本当の笑顔の半分の魅力もない。
シエラの魅力が、悲しみなんかによって損なわれるのが勿体なくカイムは悔しいと思った。
(――――俺はいつかシエラの本当の笑顔を、取り戻せることが出来るかな?)
取り戻せてあげれるのならば時間がかかってもいい。
取り戻させてあげたい。
本当の笑顔を、自分の前で見せて欲しい。
そして、もしそんな日が俺の手で来させることが出来たならば俺は心の底から嬉しく思うだろう。
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