mirage of story
その時は、隣で一緒に笑いたい。
カイムの心に、そんな想いがポツンと浮かんだ。
ガチャンッ。
そんなことを考えていると、唐突に奥の部屋の扉が開く音が聞こえた。
「お待たせ。
ごめん、時間かかっちゃって」
「.......あぁ、いや全然待ってないから、大丈夫だよ」
シエラは、奥の部屋から小走りでカイムの元に走り寄る。
そんな彼女の後ろの扉の向こうに広がる部屋を見ると、相当急いで準備したらしく、遠目からみても凄いことになっていた。
「シエラ。
もう用事は済んだ?」
カイムはそんな凄いことになっている部屋から敢えて視線を逸らして、シエラに尋ねる。
「うん....これで、何の迷いもなく旅に出れる。
───ごめん。私の我が儘でこんなとこ寄ってもらっちゃって。
......これでもう大丈夫だから」
そう言うシエラの手には一つの長剣。
その細い剣の柄をシエラの小さな手が、しっかりと掴んでいた。
「それは?」
不思議に思い、カイムはシエラに尋ねる。
「あぁ....これはね、母さんが───守り刀として私にくれた物。
最初に旅に出る時はまだ、剣なんて使えなかったからこの家に置いたままだったけど、今の私には必要だと思ったからどうしても取りに来たかったんだ」
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