mirage of story
シエラは、その細い剣身をカイムに差し出した。
「この剣は、母さんが私のためにおまじないをしてくれた不思議な剣なの。
.....この剣ならきっと、何があっても護ってくれる」
あぁ。
シエラが敵に追い付かれるかもしれないという危険を冒してまで、此処に来たいと言ったのはこの為だったのか。
微笑みを見せるシエラを前にカイムはそう思った。
「.....さぁ、用事は済んだな!
そろそろ行こう。長居は危険だ。
奴等があのまま俺たちを、放っておくはずはない」
「....そうだね。
じゃあ、今度こそ行こう───私たちの全てを託した旅に」
互いを見つめ合い、そして決意を込めて笑う。
温かな落ち着いたこの小さな空間に、二人ね強い意志が彩りを添えて何でもない質素なこの空間がキラキラ輝いて見えた。
タッ。
そう言うと、シエラはカイムの横を通り過ぎドアの前まで行く。
そのシエラの後ろに居るカイムは、シエラに気付かれないようにさっき見ていた写真をそっと服の中に忍ばせた。
「カイム、早く!」
「───あぁ、今行くよ」
シエラの元へ駆け寄る。
そして、ドアの取っ手に手をかけるシエラ。
───さぁ、これからが旅の本番。
本当の始まりだ。
この扉を開ければもう、何も迷うことなく前に進める。
この場所への未練も、全てここに置いて行く。
....ただひたすらに前に進むために。
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