mirage of story
〜7〜









追われる者シエラとカイムがちょうど森を抜ける頃に、一足遅れて追う者であるライルは森の入り口までやって来ていた。






「───着いたか」



ライルは、ボソッと一言呟いて森を見据えると
中へと足を踏み入れる。
一歩、また一歩と前へと進む。




進む度に、ライルを包む緑のグラデーションが薄くなったり濃くなったりゆらゆら揺れて、ライルを取り込んで行く。











昨日、此処でライルはシエラと初めて出会った。

目が合った瞬間に、何か電撃のような衝撃が走る。
そしてそれが、因縁の出会いだった。






揺れる緑の世界に、次第に昨日のシエラと名乗る少女とのまるで必然のような偶然の、それでいて運命とも言える出会いの光景が鮮明に蘇る。

ライルの足取りが、不意に荒くなる。 
















(思い出すだけで、俺の心が乱れてゆく。

あのシエラという女の顔。そして何故かアイツが持ってたルシアスの遺した指輪。
全てが俺の中に、刺のように引っ掛かる───)




ライルは昨日出会った、ルシアスの仇であるシエラの姿を思い出すと同時に心の中に沸々と湧き上がる恨み、憎悪の負の感情。

まるで自分では無くなっていくように、だんだんの理性という枷が弛んでいく。








(........あの女が、ルシアスの指輪を持ちルシアスを語る世界の、俺の全てを狂わせた元凶。

絶対的な悪だ)






脳裏に蘇るのはあの日の、ルシアスと生き別れた日の記憶。




傷だらけのルシアス。
俺は───逃げて.....逃げて、逃げまくった。
ルシアスの手を引き、敵の手から逃れるために、それはもう必死に走った。









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