mirage of story
(..............もう俺がこの世界に生きている理由は、ルシアスの仇を取ることそれしかない)
それが、唯一のライルがこの世界に今生きている理由。
仇を討つ。報復をする。
綺麗なことではないけれど、今の彼にはそれ以外の意味が見出だせなかった。
(ルシアスの仇は見つかった。
.........後はあの女に俺の手で、奴がルシアスに与えた痛みと同じだけの、いやそれ以上の苦しみを与えるだけだ)
昨日シエラに出会ったことで、ライルの目的を果たすための道程は一気に縮まった。
今まで靄が掛かって、何にも見えなかった未来への道が開かれた。
後はその距離を詰めて、詰めて────後は狩るだけ。
ライルの望みが叶うその日が、すぐそこまで迫っている。
そんな気がした。
(───そうしたら俺も.....ルシアスの元へ)
ライルは手にもう一度力を籠めて、そしてスッとその力を抜いた。
─────....。
そんな想いがライルの頭の中を交錯していると、不意に辺りが開けた場所になった気がして下げていた顔を上げて前を見た。
「これは.....」
目の前に広がる光景は、森ではない。
色々考えながら歩いていたら、いつのまにか森を抜けてしまっていたらしい。
目の前には、大地と天に広がる青空があった。
(いつの間に....気が付かなかったな。
誰も居ないようだったが、もう一回入り直して探すか?)
今まで、色々考えながらとはいえ森の中を歩いてきた。
だが、人の気配は感じられずに結局此処まで抜けてしまった。
ライルの推測。
とは言っても殆ど勘に近いが、ライルの捜す獲物はこの森に居る。
そう思ったのだが。
(ん?)
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