mirage of story
〜3〜
「お邪魔します」
雨宿りをするために、二人は廃墟と化した民家に足を踏み入れる。
最早此処が玄関であったかすら判らない状況ではあったが、敷居を跨ぎ一礼をし挨拶をする。
ッ。
その後ろから彼女も小走りで駆け込む。
段々と酷くなる雨足。
空から降ってきた雨から逃れるように、廃墟の中へ駆け込んだ。
「....結構濡れちゃった」
そう言いながら羽織っていた外套を脱ぎ付いた水滴を払い落とす。
「この雨だ、仕方が無いよ」
そう言う彼も濡れた外套を脱いで近くにあった壁に凭れ掛かる。
廃墟の隙間から外を覗けば辺りを白い靄で覆う程の酷い雨。
早めに雨宿りの判断を下したのは、どうやら正解だったようだ。
ッ。
そんな外の様子に彼は一つ息を落とすと、徐に懐から小さな布切れを取り出して彼女へと差し出す。
「ほら、濡れたままだと風邪を引くから」
差し出される綺麗に折り畳まれた布が彼の几帳面さと優しさを表す。
「あ、ありがとう」
差し出された布切れ。
それを受け取って言われた通り、濡れた髪を布切れで拭う。
.........。
だがその小さな布切れではシエラの濡れた長い髪から完全に水滴を拭い去ることは出来ずに、すぐにびしょ濡れで使い物にならなくなってしまう。
「あ......ごめんなさい。
これじゃあ貴方が拭けないわ。
どうしよう―――」
「構わないよ」
びしょ濡れの布切れを申し訳なさそうな彼女受け取る。
ッ。
カイムは受け取ったそれを絞って二三回払うと、軽く折り畳み再び懐にしまう。
彼自身はと言うと軽く左右に首を振り彼女に掛かってしまわないように考慮しながら滴を散らすと、それでもう良しとしてまた雨降りの外へと視線を移した。
「それにしても一気に強く降ってきた。
暫く止みそうに無い」
小さくため息をついた。
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「お邪魔します」
雨宿りをするために、二人は廃墟と化した民家に足を踏み入れる。
最早此処が玄関であったかすら判らない状況ではあったが、敷居を跨ぎ一礼をし挨拶をする。
ッ。
その後ろから彼女も小走りで駆け込む。
段々と酷くなる雨足。
空から降ってきた雨から逃れるように、廃墟の中へ駆け込んだ。
「....結構濡れちゃった」
そう言いながら羽織っていた外套を脱ぎ付いた水滴を払い落とす。
「この雨だ、仕方が無いよ」
そう言う彼も濡れた外套を脱いで近くにあった壁に凭れ掛かる。
廃墟の隙間から外を覗けば辺りを白い靄で覆う程の酷い雨。
早めに雨宿りの判断を下したのは、どうやら正解だったようだ。
ッ。
そんな外の様子に彼は一つ息を落とすと、徐に懐から小さな布切れを取り出して彼女へと差し出す。
「ほら、濡れたままだと風邪を引くから」
差し出される綺麗に折り畳まれた布が彼の几帳面さと優しさを表す。
「あ、ありがとう」
差し出された布切れ。
それを受け取って言われた通り、濡れた髪を布切れで拭う。
.........。
だがその小さな布切れではシエラの濡れた長い髪から完全に水滴を拭い去ることは出来ずに、すぐにびしょ濡れで使い物にならなくなってしまう。
「あ......ごめんなさい。
これじゃあ貴方が拭けないわ。
どうしよう―――」
「構わないよ」
びしょ濡れの布切れを申し訳なさそうな彼女受け取る。
ッ。
カイムは受け取ったそれを絞って二三回払うと、軽く折り畳み再び懐にしまう。
彼自身はと言うと軽く左右に首を振り彼女に掛かってしまわないように考慮しながら滴を散らすと、それでもう良しとしてまた雨降りの外へと視線を移した。
「それにしても一気に強く降ってきた。
暫く止みそうに無い」
小さくため息をついた。
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