mirage of story
「歩き通しで疲れてた所だ、折角だから此処で少し休ませてもらおう?」
「.......えぇ」
一日半、ずっと歩き続けた足には結構な疲労が溜まってらしい。
ッ。
座った瞬間に疲れがドッと出てきた。
「.......それにしてもこの建物、どうしてこんなに崩れてるんだろう?」
――――。
座り込む二人。
カイムは座ったその状態のままで改めて廃墟の中を見回して言う。
白い壁。天井。
全体が所々に崩れていて、色々な場所から雨漏りをしている。
窓の硝子は崩れ去り、床には砂埃が溜まる。
元々は人が住んでいたのだろうが、今は生活感が全く感じられない。
「前に来た時は、こんな風じゃなかったわ。
何かが起こったのよ.........この街に」
カイムの言葉。
シエラも崩れ掛けの壁を手を触れて改めて感じる状況の異常さ。
ッ。
「────あの」
廃墟と化した街への疑問。
姿の見えない街の人への不安。
外から聞こえる降りしきる雨の音に耳を傾けながら語る二人の旅人の影。
ッ!
そんな静かな廃墟の空間に突然に聞こえる第三者の声に、二人はバッと飛び上がり腰に掛かった剣の柄を反射的に握る。
「誰か、居るのですか?」
カイムが奥の闇に声を掛ける。
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