mirage of story
動き出す、蒼黒の影
〜1〜
「王の間へ急げ!
ロアル様が待っておられる、さぁ急げ!」
城の中に響き渡る声。
その声は何人かの兵を前にして城中に聞こえるような通った声で指示を出す。
威厳のある、だけど何処かまだ幼さの残る声。
指示を出しているのは、一人の男。
いや、少年である。
........。
指示を出されている兵士達は三十路をようやく越えた辺りの勇猛そうな男達。
明らかに少年より年上の者ばかりで、青年とも言い難い大人。
しかもその上に彼等は軍人である訳だから少々むさ苦しい者が多く、まだ若く印象爽やかである少年が一段と映えて見えた。
――――。
年端もいかない少年が、そんな大人の男たちに向かって指示を飛ばす。
この普通とは逆転した光景。
余所から見ればとても異様な光景に違いない。
「俺は先に行っている。
準備が出来たらすぐに来い!」
「はっ!」
兵士等は指示を飛ばす少年に敬礼し廊下を駆けて行く。
きっと他の兵達を呼びに行ったのだろう。
さすがは訓練を日々積み重ねているだけあり行動は早いものだ。
足音が遠ざかる。
ッ。
すると辺りはすっかり静かになった。
「ふぅ.....」
去り行く部下達の背中を遠目に、ライルは一つの溜め息をついた。
―――。その溜め息は少しの間、虚空に漂い、そして消える。
ライル。
彼はこの国、魔王ロアルが統治するこの大国ロマリアの国家先鋭部隊という大それた名を持つ部隊の隊長。
歳は若干、十八歳。
この若さでの隊長、ましてやこの国の保有する軍の中で最上の先鋭隊の隊長になるなど歴史上初めて。
異例の出世だった。
.
「王の間へ急げ!
ロアル様が待っておられる、さぁ急げ!」
城の中に響き渡る声。
その声は何人かの兵を前にして城中に聞こえるような通った声で指示を出す。
威厳のある、だけど何処かまだ幼さの残る声。
指示を出しているのは、一人の男。
いや、少年である。
........。
指示を出されている兵士達は三十路をようやく越えた辺りの勇猛そうな男達。
明らかに少年より年上の者ばかりで、青年とも言い難い大人。
しかもその上に彼等は軍人である訳だから少々むさ苦しい者が多く、まだ若く印象爽やかである少年が一段と映えて見えた。
――――。
年端もいかない少年が、そんな大人の男たちに向かって指示を飛ばす。
この普通とは逆転した光景。
余所から見ればとても異様な光景に違いない。
「俺は先に行っている。
準備が出来たらすぐに来い!」
「はっ!」
兵士等は指示を飛ばす少年に敬礼し廊下を駆けて行く。
きっと他の兵達を呼びに行ったのだろう。
さすがは訓練を日々積み重ねているだけあり行動は早いものだ。
足音が遠ざかる。
ッ。
すると辺りはすっかり静かになった。
「ふぅ.....」
去り行く部下達の背中を遠目に、ライルは一つの溜め息をついた。
―――。その溜め息は少しの間、虚空に漂い、そして消える。
ライル。
彼はこの国、魔王ロアルが統治するこの大国ロマリアの国家先鋭部隊という大それた名を持つ部隊の隊長。
歳は若干、十八歳。
この若さでの隊長、ましてやこの国の保有する軍の中で最上の先鋭隊の隊長になるなど歴史上初めて。
異例の出世だった。
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