mirage of story
〜2〜








賑わう街。行き交う人。
街の大通りには、たくさんの店が軒を連ねて客を引き込もうと奮闘する人々の声が飛び交う。



そんな活気溢れる街の名はアトラス。
交易が盛んで商人達が集まる街である。

そんな賑やかな街。
また一人新たな者が足を踏み入れる。












「──────へぇ、此処がアトラスか。
さすが交易の街、噂通り活気があるねぇ!」




街に入った一人のは若い男。
その男の第一声がこれだった。



長い銀色の髪を後ろで一つに束ねて、旅装束であろう外套を身に纏う。
瞳は綺麗な紅色。
整ったその顔には細やかな笑みが浮かぶ。

.......。
その笑みが、その男の印象を軽く見せる。
歳は見たところ二十歳くらいで、背は高かった。








「そこの兄ちゃん!これ、買ってかねぇか?」



男が少し足を進めると、すぐに威勢のいい声が引き止める。





「いやいや、兄ちゃん!俺の店を見て来な!
安くしとくぜ?」




そんな様子を見て、他の店の者も負けじと言う。
さすがは商人の街である。









「いや、すまないねぇ。今は丁度金の持ち合わせが無いんでね?
また金が出来たら来させてもらうとするよ」




そんな自分を呼び止める声を軽い笑顔と言葉であしらう。
明るい声とその笑み故か、断られた商人達も別に悪い気はしなかったらしくまた別のお客に同じように声を掛ける。


.......。
随分と切り替えが早いものだと男は感心を覚えつつ、男はそんな声を背にどんどん先へと進んで行く。








「........まず、宿でも探すか」



男はそう言うと宿を探すべく辺りを見回す。






 
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