mirage of story
 
 
 



 
――――。 
だが立ち並ぶ店が多すぎる。

少し上を見上げればズラリと並ぶ看板達。
見る気が失せるし、そう簡単には見つかりそうもない。







「ったく.....店多すぎ」



ずっと立ち並ぶ店。
絶えることのない行き交う人々。

そんな街の様子に、男は疲れを覚えて軽く笑いながら溜め息をつく。










「――――おぉ、兄ちゃん。何か捜し物かい?」



周りをきょろきょろと見回す男。

その様子を見兼ねてか、誰かが後ろから声を掛けてきた。


ッ。
その声に、男は振り返る。
そこには一人の中年の男が立っていた。







「ん?あぁ、ちょっと宿を探しててねぇ。

おっちゃん、どっか良いとこ知らねぇかい?
安くて綺麗で.....そうだなぁ、あと飯が美味いとこ!」



「おぉっ!何だ兄ちゃん宿探してんのかい?」




中年の男は、ガハハと豪快に笑う。








「丁度良い!俺のとこは宿屋をやってんだ!

まぁ、綺麗とは言えねぇが.....安くて、飯の味は最高だ!
どうだ、うちの宿にしねぇか?」




何と運が良いことか。

.......。
男はその偶然の出逢いとその言葉に顔一杯に笑みを浮かべる。






「いいねいいねぇ、おっちゃん!
じゃあお言葉に甘えさせてもらおうか!」



「じゃあ決まりだな!
兄ちゃん、俺は買い物を済ませてから行くんでな。先に行っててくれ?

店は、この先の一つ目の角を右に行ったところの突き当たりだ」




「あぁ、ありがとな。
世話になるよ、おっちゃん!」







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