mirage of story
 
 
 
 
 
 


また軽く笑いながら呟くように言う。

ッ。だが今度のその紅の瞳の笑みの奥には何処か暗さを感じられた。








「ん?
何か言ったかい、兄ちゃん?」



「いいや、なんでもない」




そんなジェイドの言葉の陰りに、店主の男は気が付かなかったようである。
聞き返してきたその声に、別に繰り返し言うことでもなくてジェイドは軽く流した。









「ん、そうか。

あ、そうだ兄ちゃん!
時間に余裕があるなら、近い内にあるこの街の祭りを見てくといい!

この街で最大の祭りだ。見ていって損はねぇ!」



「お、祭りか!
いいねぇ、たまにはそういう華々しいのも。

ハハハッ、どうせ暇だしな!行ってみるか!
じゃあそれまで世話になることにする。
頼んだぜ、おっちゃん?」




「おう!任せけ兄ちゃん!

祭りまではまだ日がある。その間に街を見学でもしてくるといい。
珍しいもんがたくさんあるぞ?
何せ此処は様々な者が集う交易の街だからな!ガハハ!」




「あぁ、そうすることにする」






宿屋の店主は、ジェイドの返事にニカッと笑う。
そしてジェイドも、つられるようにお得意の軽い笑み。







「じゃあ、兄ちゃん。
部屋に案内するから来てくれ!」



宿屋の店主は、そう言うとその場に立ち上がる。
それから部屋の奥にある扉を指差して、ジェイドを見た。 






「さぁ、こっちだ。
ジェイドの兄ちゃん」




宿屋の店主が手招きをする。
その手に誘われ呼ばれる方へと歩いていく。








.
< 431 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop