mirage of story
ーーー
 
 


 
 
 
「──────。
此処がアトラスの街か」


「アトラス......凄く大きい街なのね」




街の入り口までやってきた二人の旅人、つまりシエラとカイムは二人揃って思わず呟く。



この街は今までの街とは比べものにならない。
人が溢れ活気に満ちるこのアトラスの街。

――――。
知っているものとは表情も規模も違う街の様子に、二人揃って口があんぐりと開いてしまっていた。










「さすが交易の街と呼ばれてるだけある。
凄い人の数だ!」




活気溢れる街。
カイムはその中を好奇心に満ちる瞳で、ぐるりと見回して感嘆の声を上げる。

意外とこういう雰囲気は嫌いでは無いらしい。





......。
人、人。そしてまた人。

街の中は一面、人で溢れ返っていた。


賑やかな音。飛び交う人の声。
二人にとって、この光景は凄く新鮮で驚くべきものだった。









(........こんな沢山の人、今まで見たことないわ)



目を煌めかせて街を眺める彼の隣でシエラも心踊らせる。


ここまでやってくるまでにあった辛い出来事、悲しい別れ。
そんな負の気持ちが満ちていた二人の心に光が差した気がした。










――――。

ネビアとの、大切な人との辛い別れを背に五日程歩いた。
慣れない砂の舞う砂漠の中を歩いて辿り着いたこの街。

このアトラスという街は、交易の街として名高い砂漠の中にある商人の街である。



交易が盛んな街には、沢山の人が集う。
そしてその分いろんな情報も集まりやすい。

主として人間達の街であるが、正体を隠してこの街に立ち寄るという魔族も少なからず居る。
今のこの世界では珍しいそんな街。







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