mirage of story
きっとそんな街ならば、知りたい情報も手には入る。
魔族のことも指輪のことも、そしてまだ知り得ないこの世界の現状も。
今はとにかく情報が必要だった。
これからを勝ち抜くためにも、生き抜くためにも。
それに此処には調達したい物資も在れば、休息を得られる宿も在る。
今の彼等には他と無く相応しい街。
そう考えて、二人はこの街へとやってきた。
「いつまでもこうしては居られないな!
よし、中に入ろう。
シエラ、人が多いからはぐれないように掴まってて?」
「えぇ」
ッ。
押しては返す人の波。
その波に振り解かれないように、彼女はカイムの服の裾をしっかりと握る。
これなら、はぐれることはない。
カイムは横目でそんな彼女を一瞥すると安心したように笑う。
――――。
よし、これで大丈夫。
二人は人が溢れるアトラスの街へと足を踏み入れた。
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