mirage of story
 
 
 
 
 
 
ッ。 
諦めたように力を抜く彼は、ふと隣に座るシエラを見る。

.......。
彼女も相当疲れているようだ。
座り込んだまま足を擦っていた。














「──────。
おい?あんた達、大丈夫かい?」




道の脇で座り込む彼等。

.......。
そんな二人の疲れ切った様子が気になったのだろう。
一人の男が話し掛けてきた。


話し掛けてきた男。
それは紅い瞳で、長い銀髪の若い男だった。













「あ.....はい、ありがとうございます。
少し疲れてしまって、でも大丈夫です」




突然に声を掛けられて少々慌てて答える。

その答えに男はちらりと彼を見て、今度はシエラに視線を移す。







「私も大丈夫です。
この街に来たばっかりで、少し疲れてしまって」



「ハハッ!この人の波、疲れるのも無理もねぇな。
この街は人多すぎる、まぁ今日は特にだが。

慣れない奴が来れば誰でも疲れちまうなぁ、これは」




人溢れる大通り。
フッとそこに目をやると、苦笑いを浮かべて溜め息をつく。

――――。
そして、見るのも懲り懲りというばかりに視線を戻した。










「お、そうだ!
あんたたち疲れてるなら、俺が世話になってる宿にでも来ねぇか?

こんなとこより、ずっと休めると思うぜ?
あ、もうそれとも泊まり先が決まってるかい?」



湧くような人の数にわざとらしく身震いをして彼はシエラ達の方を向き直る。

そうして数拍の間を置き、今度は思い出したような仕草をして彼女達に言う。







「場所は此処を抜ければすぐのとこさ!
綺麗.....とは言えねぇが居心地はいいぜ?
どうだい、あんた達?」




男の提案。
一刻も早く休める場所へと思う二人に断る理由も無い。







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