mirage of story
 
 
 




 
 
「っ!いえ、宿は今から捜すところで......助かります!」




折角なので好意に甘えることにした二人は勢い良く答える。

ッ。
知らない人には付いて行っちゃ駄目という子供の頃の教えが過ぎったけれど、何となく本当に直感だけれどこの人は大丈夫だと二人は思った。








「気にするなって。
ハハッ!困ってる時はお互い様さ?」



男は笑って言った。







「そうだ、名乗るのを忘れてたな!
俺の名はジェイドだ。
よろしくな、お二人さん?

あんた達、名前は?」




「俺はカイム。そして彼女はシエラと言います。
二人で旅しているんです、俺達は。
それでその途中、此処に立ち寄った旅の者です。

よろしくお願いします、ジェイドさん!」




カイムは答える。

ッ。
その答えに、ジェイドは笑みを浮かべた。何だか少し意地悪そうな笑みだった。










「──────へぇ、二人で旅してるのかい?
ハハッ!若いっていいねぇ、うん」 



「........はい?」




「いやぁ、うん。ハハッ、何でもないさ。

と!まぁ立ち話も何だからそろそろ宿の方行くかい?
話は後でゆっくりと聞かせてもらおうじゃないの、仲良しなお二人さん?」




意地悪そうな笑み。
その意味も言葉も判らない二人の頭上には疑問符が浮かぶが、ジェイドは気に止めずにハハッと笑う。

―――。
そして疑問符を浮かべたままの二人を置いて、さっき指差した宿屋のある方向へと一人歩き出してしまう。







「ま、待って下さい!」



「ん?お二人さん、早くしねぇと置いてくぞ?」





........。
先程の言葉と笑みの意味は気になるけれど、今は取り敢えず付いて行かなければ。

二人は頭の中に靄々したものを抱えたままに、どんどん先へと行ってしまう彼の綺麗な銀髪を追い掛ける。








(何なんだろう、さっきのは。
.....でもまぁ、いいか) 







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