mirage of story
(───あの後、俺はどうしたんだろう?)
倒れ途切れた意識。
それと繋がる記憶は、見慣れた彼の住む家の天井と、心配そうに覗き込む母の瞳。
........。
倒れた時から家で目を覚ますまで記憶が全くと言って良い程に、彼の中には存在しない。
(可笑しいな。
自分で家に戻った記憶なんて無いのに)
カイムの中に疑問が過る。
(今までは考えたこともなかったな。
父さんが出ていってしまう.....ただそれだけで頭が一杯だった。
だけれど)
だけれど今考えてみれば可笑しい。
意識のない自分に去り行く父の姿。
記憶に残るのはそれだけ。
そのはずなのに何故自分は目覚めた時、部屋の中に居たのだろうか?
途切れた記憶から推測するならば、カイムはあのまま倒れたままの状況で目を覚ますはず。
もしかしたら、あのまま目を覚まさなかったかもしれない。
(.....)
疑問が深まる。
あの時倒れた自分はどうやって家まで辿り着いたのだろうか?
......。
誰かが運んでくれたとでもいうのだろうか?
そう考えたが、首を左右に振る。
(運んでくれたとしても、一体誰がそんなこと)
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